体験を「外から見る」―偽警察官詐欺を漫画化する

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2026年8月、偽警察官詐欺に遭いました。幸い、金銭的な被害には至っていません。
この体験を、記録として残します。
※警察には通報済みです。

導入|なぜ、この体験を漫画にしたのか

2026年8月、私は偽の郵便局員と警察官を名乗る人物から電話を受け、その後、LINE通話を使ったやり取りの中で、相手を本物の警察官だと信じかけた。

幸い、金銭的な被害には至らなかった。

けれど、その後に残ったのは、「どうして私は信じたのだろう」という問いだった。

途中で違和感がなかったわけではない。
私は何度も質問していたし、何度も「おかしいのではないか」と考えていた。

それでも、私はその場(LINEでのやり取り)から離脱しなかった。

この体験を文章だけで振り返ろうとすると、どうしても「何が起きたか」の説明になってしまう。
けれど、私が残したかったのは、出来事の一覧ではなく、そのとき自分には何がどう見えていたのかだった。

そこで、49ページの漫画として描いてみることにした。


第1節|「騙された」のではなく、その世界の中で考えていた

振り返ってみると、私は最初から思考を止めていたわけではなかった。

「本当に警察ですか」
「公文書番号の照会だけではないのですか」
「これから郵便局へ行くのですか」
「知らない個人名義の口座に振り込むものなのですか」

私は何度も尋ねていた。

ただ、ひとつ大きな問題があった。

問いかける相手が、ずっと同じだった。

相手から説明を受け、その説明を材料にして、また相手へ質問する。
疑問を持っても、その世界の外側にいる誰かに確認することはしなかった。

今になって見えてきたのは、私は「考えていなかった」のではなく、相手によってつくられた前提の中で、かなり真面目に考えていたということだった。


第2節|漫画にすることで、「当時の私」と「現在の私」が分かれた

漫画をつくる過程で、意識して分けたことがある。

ひとつは、相手が実際に言ったこと。
ひとつは、そのとき私が受け取った意味。
そしてもうひとつは、今振り返って初めて気づいたこと。

この三つを混ぜないようにした。

たとえば、相手の説明を聞きながら、私は頭の中で出来事同士をつなげていた。
けれど、その「つながり」を、相手が本当に言ったとは限らない。

漫画にしようとすると、「この言葉は誰が言ったのか」「これは事実なのか、それとも自分の解釈なのか」を一つずつ確認する必要が出てくる。

その作業によって、当時の自分から少し距離を取ることができた。

これは私にとって、単なる記録ではなく、経験をもう一度観察する作業だった。


第3節|言語化することは、経験を単純化することではない

詐欺被害について語るとき、

「警察がLINEを使うなんておかしい」
「どうして家族に相談しなかったの」
「普通なら気づくでしょう」

という言葉は、とても簡単に出てくる。

もちろん、それらは間違いではない。

けれど、実際にその状況の中にいる人間には、外側から見れば明白なことが、必ずしも同じようには見えていない。

出来事が次々に起こり、そのたびに説明が与えられ、一時的に納得する。
平常心を取り戻す前に、また次の出来事が来る。

その積み重ねの中で、判断の前提そのものが少しずつ変わっていく。

だから、この漫画でやりたかったのは、
「詐欺師はこうやって騙す」という手口の解説ではない。

その中にいた人間に、何がどう見えていたのか。

そこを残すことだった。


*上記は作成した漫画中の1ページ:私は何度も確かめた。でも、確かめる相手を変えていなかった。


結び|「あれ?」を外へ出す

この体験を振り返って、私がいちばん大事だと思うようになったのは、「正しい知識を持つこと」だけではない。

もちろん、詐欺の手口を知っていることは大切だ。

けれど、どれだけ知識があっても、自分がすでにひとつの閉じた世界の中に入ってしまっていたら、その知識を使えるとは限らない。

だから、今の私はこう思っている。

「あれ?」と思ったら、その場にいる相手だけに説明してもらって終わらせない。

いったん、その世界の外へ出る。

誰かに話す。
別の場所に確認する。
自分の感じた違和感を、外側にいる人へ渡す。

言葉にすることは、答えを出すことではない。

けれど、言葉にすることで、自分が今どんな世界の中にいるのかを見直すことはできる。

今回、漫画という形でこの経験を残したのも、そのためだったのだと思う。


※本作は実際の体験をもとに制作しています。個人名・電話番号・金額等は匿名化し、記憶が曖昧な部分については断定を避けています。
※漫画全文は現在、関係機関への共有を行っています。

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