AICHI NEXT:Performing Arts Project

愛知県芸術劇場では公募によって新しい才能や人材を発掘し、愛知芸術文化センターの多様な空間(愛知県芸術劇場小ホール、大リハーサル室、センター内オープンスペース)でのパフォーマンスを通じ、発信・育成を図る新たなプログラム「AICHI NEXT:Performing Arts Project」をスタートさせました。

初年度となる今回は、50組以上の応募の中から若い世代のアーティストを中心に、ジャンル横断的で、実験的な作品+アーティスト視点による地域資源の発掘・魅力発見など、ユニークかつ新規性のあるプログラムを6作品発表、有料公演のチケット購入者を対象として“6作品はしご観覧ツアー”も初めて実施し、鑑賞者と作品の距離をグッと近づける工夫も試みられました。

*以下に<Challenge stage>の8月15日の鑑賞メモを記録します。
 <Challenge stage+>と<Advance stage>については、別の記事でご紹介します。

ぬくみ『スクール・デイズ』

場所:愛知芸術文化センター 2階フォーラム Ⅰ(南玄関側)
脚本・演出:川セマリン
出 演:高野遥、甲斐鈴葉、成重初花、山邊桃花

カラフルな今どき女子ファッションの女性5名。発せられる言葉は断片的で、動きと意味の繋がりは他者には記号的でわからない(彼女たちの中では共通言語になっているのかも)。これらの営みは上演時間中に何度か繰り返されるが、少しづつ発せられるトーンや速度は変化し、単一的な表現にとどまらない。筆者は「珍しいキノコ舞踊団」(1989-2019)を想起したが、ぬくみの場合は“ダンスする身体”というより、”空間を異化する営み的身体”・・・日常という時間の視点を変えるという印象が強かった。繰り返しについては少年王者舘のパフォーマンスを想起したが、これもまた身体と時間の密度という点では、繰り返されるごとに圧縮されていく少年王者舘と比べると、繰り返しつつズレを生じさせ、やがてあったかどうかわからない日常へと帰無していく感覚を覚えた。

VIVE 『NO IMAGE』

場所:愛知芸術文化センター 2階フォーラム Ⅰ(南玄関側)
出 演:杉浦ゆら、安堂佑希人、荒木正比呂

ダンサーの杉浦ゆら・安堂佑希人と音楽家の荒木正比呂からなるユニット。荒木の音楽はガラス張りの2階フォーラムの空間と相性がよく、ダンサーの杉浦と安堂はヴィヴィッドピンクのヴェールに黒い衣装(髪は2人とも後ろで束ねている)と、スタイリッシュな印象。アクティングエリアには胸部までのヌードマネキンと大きな姿見が置かれていた。作品後半、安堂はこの姿見を執拗にヴェールで拭い、鏡面に映された虚像を脅迫的に消し去ろうとしているようだった。一方、杉浦の芯の強い動きは踊ることによって冷たい印象の空間に体温を与える熱源。ラストシーンで2人は抱き合い、互いの体温をうつしあうように差異を補完する。そうすることで真実の世界を感じることが出来るとでもいうように。

永田 佳暖 『モチャカル!!』

場所:コンサートホール
作・音楽・演出・出演:永田 佳暖
映 像:永田 桜子

永田 佳暖はボイスパフォーマー・声楽家。観客はコンサートホールの舞台上に用意されたイスに座る。客席側に遠い舞台上には小さな白いテントが設置され、黒い髪の毛のような長い紐状のオブジェがテントの先端からテントの稜線に沿って垂れ下がっている。また、一部の観客には「作家が近づいてきたら、腕に取り付けて下さい」といって、ゆったりとしたバネに球のようなものがセットされたオブジェを手渡されるという仕込みもあり、観客は作品終盤に作品の中に取り込まれていく。意図して出す声とそうではない声・・・声の多様な姿を表現しつつも、白いテントに映像を投影したり、自ら中に入って腕を出したり引っ込めたりというパフォーマンスも織り込まれる多様な表現。「モチャカル=もちゃかる」は名古屋弁の方言で“もつれる”という意味があるそうだ。永田の多様な表現要素を1つ1つそぎ落としていった時に何が残るのか、モチャカル!!の次の展開も気になった。

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