2018年7月8日、寶榮座に再び笑いと熱気が満ちた。農村舞台寶榮座協議会による第2回主催公演には、原智彦率いるハラプロジェクトが登場。筑前琵琶による舞踊劇「網館(あみやかた)」と、十八番のスーパーコミック歌舞伎「勧進帳」の二本立てが、詰めかけた観客を沸かせた。
カテゴリ:仕事|投稿日:2018年7月8日
【出典:農村舞台寶榮座HP】
【1】語りと所作が交差する舞踊劇「網館」
「網館(正式には『渡辺綱館之段』)」は、鬼に化けた叔母が主人公・渡辺綱の屋敷を訪れ、切り落とされた腕を取り返すという物語。
羽織袴に身を包んだ原智彦が鬼の所作を見せ、綱とのやり取りは筑前琵琶奏者・安井旭道による語りで進行。
本来は三味線で演奏される場面を琵琶に置き換えることで、鬼の心情が鮮やかに浮かび上がる。
怒りと哀しみを内に秘めた鬼が老婆の姿で綱に近づき、やがて腕を取り返して姿を消す展開は、情感と緊張感を見事に描き出していた。
【2】笑いと破天荒が交差する「スーパーコミック歌舞伎 勧進帳」
2作品目は、ハラプロが誇る“スーパーコミック歌舞伎”版の「勧進帳」。
伝統の枠にとらわれず、ポップな感性で再構成された舞台は、まさに笑いと破天荒のオンパレード。
主君・義経は美しい女性俳優(磯和真帆)が演じ、番卒たちは工事現場のようなコスチュームや網タイツ姿で登場。
弁慶役の今藤敦雄は刺青姿に木槌や鉞、そしてエレキギターまで背負って舞台に登場するという、豪快かつ斬新な演出が続く。
中でも観客の記憶に残ったのは、弁慶が番卒たちを斬っては首を飛ばしていくシーン。
斬られた役者が首を衣装に引っ込め、作り物の首をポーンと飛ばす演出は、シュールでロックで、まさに“スーパーコミック”。
その圧倒的な自由さとパワーに、観客はサウナあがりのような爽快感で満たされた。
【3】農村舞台で体感する「いま」の演劇
寶榮座という歴史ある空間で、現代的で実験的な表現が繰り広げられたこの公演。
地域文化を守るだけでなく、新たな“場”を生み出す創造的な試みとして、多くの可能性を感じさせた。
🟦 関連情報
- 公演日:2018年7月8日
- 上演:ハラプロジェクト
- 会場:寶榮座(愛知県豊田市)
- 主催:農村舞台寶榮座協議会
- 出典:寶榮座公式サイト/執筆:ATL
(文責:Art&Theatre→Literacy・農村舞台寶榮座協議会 亀田恵子)
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